催眠は興味あるけれど、怖いと思っている人や少なからず不安に思っている人は案外多いかもわかりません。
“怖い” と思う理由は色々あると思いますが、催眠ショーやTV番組などのマスメディアの影響が大きいのではないでしょうか。
催眠ショーや催眠の番組では、催眠術師が被験者に催眠をかけると被験者は催眠術師の言うなりになっているように見えます。
眠れと言われれば眠ってしまう、あなたは犬ですと言われれば「ワンワン」と吠えたり、まるで自分の意志がなくなってしまうかのように催眠術師に操られる。
そこに催眠にかかると “怖い” と思ってしまう一因があるのではないでしょうか。
どうして催眠を怖いと思うのか、本当にそうなのかを見ていきたいと思います。
その前に、私たちの意識はどうなっているのか、催眠状態とはどんな状態なのかを説明しておきたいと思います。
催眠とはどんな状態なのか
まずは私たちの意識の構造について説明しましょう。
意識の構造はどうなっているか
意識は、大きく分けると顕在意識と潜在意識に分かれます。
顕在意識は一般的な「意識」と言われている、自分で認識している意識です。
潜在意識はいわゆる「無意識」の領域の意識で、自分では認識していない意識です。
意識は氷山に例えられていますが、海上に見えている部分が顕在意識で、海の下の見えていない部分が潜在意識です。
最近の研究(心理学、脳科学)では顕在意識は全意識の1~5%、潜在意識は全意識の95~99%と言われています。
殆んどの意識は私たちが認知していない部分であることがよくわかります。
催眠の意識状態はどうなっている?
意識がどうなっているのかはわかっていただけたと思います。
その上で、催眠時の意識がどのようになっているのかについて説明します。
通常私たちが目覚めているときは、潜在意識と潜在意識が混濁しないようにクリティカルファクターという膜で区切られています。
と言っても、意識ですからクリティカルファクターは物理的なものではありません。
催眠状態というのは、この膜を外している状態で、顕在意識と潜在意識がコミュニケーションをとれる状態なのです。
顕在意識はちゃんとありますので、自分の意志で嫌なことはしないという判断もできる状態です。
催眠は特別な意識状態ではなく、日常に起きていることなのです。
例えば夜寝る前や朝目覚めてすぐのぼんやりしている状態や何かに集中している状態などです。
私たちは、一日に十数回催眠に出たり入ったりしているんですよ。
では催眠ショーはどうなの?と思われる方のために催眠ショーと催眠療法との違いについて述べておきます。
催眠ショーと催眠療法について
まず最初に言っておきたいことは、催眠ショーと催眠療法は全く別物であるということです。
催眠ショーは見せるためのもので、催眠術師が行い、催眠術をかけられる人との間で事前準備をする場合が殆んどです。
かかりやすい人を対象とするとか、ある程度練習をしておくとかです。
催眠療法は欧米では医療と認められており(日本でもある条件下で保険の適用もされてきています)、認定資格がある催眠士(催眠療法士、ヒプノセラピスト)が行う心理療法で、治療(または施療)を目的とします。
それでは、認定を受けた催眠士(ヒプノセラピスト)という立場で、催眠は本当に怖いのかをお伝えしていきたいと思います。
催眠を “怖い” と思う3つの理由
催眠を“怖い”というのは、自分にとってよくないことが起こりそうな不安、危害を加えられそうで不安、悪い結果がでるのではないかという不安、不思議な力に不気味に思うことから感じます。
このことから催眠を “怖い” と思うのは、大きく次の3つに分けられるのではないでしょうか。
- 自分の意志がなくなり、誰かの思うままに操られてしまうのではないか
- 催眠にかかったら、そのままになってしまうのではないか
(自分が変わってしまうのではないか) - 自分の意志とは関係なく、何かにマインドコントロールされてしまうのではないか
(洗脳されるのではないか)
では本当にそうなのか、それぞれ見ていきたいと思います。
催眠の3つの “怖い” は本当なのか
催眠を “怖い” と思う3点について、本当はどうなのかを一つ一つ見ていきましょう。
自分の意志がなくなり、誰かの思うままに操られてしまうのではないか
催眠の意識状態のところでお話しましたが、催眠状態の時は顕在意識もちゃんと側にいて働いています。
ですから自分の意志は存在していて、誰かに操られてしまうことはありません。
自分の意志で嫌なことはしないし、嘘をつくことだってできるのです。
催眠にかかったら、そのままになってしまうのではないか
催眠にかかると二度と目覚めないのではないかと恐れている人もいます。
セッションではセラピストが必ず覚醒の手順をふみますし、実際には自分の意志でいつでも覚醒することができます。
また、何もしなくても普通の睡眠に入った後は自然に目覚めることができます。
つまり催眠にかかったままの人はいないのです。
自分の意志とは関係なく、何かにマインドコントロールされてしまうのではないか
催眠にかかっていても主導権は常に本人の手にあります。
催眠状態の意識の説明にもありましたが、自分の意志はなくならないので、本人が同意できない場合は従わないのです。
したがって、催眠によってマインドコントロールされることはありません。
これで催眠に対する見方は随分変わってきたのではないでしょうか。
では催眠のいいところ、メリットって何でしょう。
次に項目では催眠のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
催眠のメリットとデメリット
メリット
① 莫大な情報の宝庫である無意識レベル(潜在意識)にアクセスできる
顕在意識レベルでわからないことでも、潜在意識から答えを得る可能性があります。
例えば米国では州によって忘れていた記憶を催眠でよみがえらせて、裁判の証拠として採用することが認められています。
また、自分ではわからない原因を確認できたりします。
② 顕在意識に邪魔されることなく、自分に必要な暗示を潜在意識に届けることができる
顕在意識は情報を感覚器官から受け取って、論理的に思考し、分析し、評価・判断して決定することができるので、「こうしたい」「こうなりたい」と思っても、「時間がない」「能力がない」「もう年だから」「お金がない」「今までできなかった」からと「できない」「無理」と決定づけてしまい、自分の思いや望みを退けてしまうことがあります。
しかし、催眠状態では意識の殆んどといっていい潜在意識にダイレクトに暗示を伝えることができ、望みが叶いやすくなります。
潜在意識を働かせることは、暗示の現実化に最も効力を発揮すると言われています。
③ 催眠状態は体温を上げ、体内循環がよくなる
潜在意識は身体の機能を管理しているので、催眠下では活発になります。
④ 催眠は心身が深くリラックスできる
催眠時の脳波はα~θ波で、深いリラックス状態です。
20分の催眠は数時間の睡眠に匹敵するといわれています。
デメリット
① 自分の本心を知ってしまう
自分の願いだと思っていたことが、実は違っていたということに気づいたりします。
自分の本心がわかり、人生が思わぬ方向に進んでいくこともあります。
しかし結果的に偽りのない人生を歩めるかもわかりません。
② もし“間違った”暗示を入れてしまったら、望む方向とは反対の方向に行ってしまう場合がある。
“間違った” というのは、潜在意識の性質を知らずに暗示文を作ってしまい、結果的に意向とは反対の状態になってしまうということです。
例えば緊張しないように「緊張しない」という暗示を潜在意識に届けた場合、潜在意識には否定形がわからないという性質があるため、「緊張」を強化させる暗示が届くので望みとは逆になってしまいます。
これらをふまえて、どんな場合に催眠を利用するとより効果的な結果が得られるのか考えてみましょう。
催眠療法に向いていること
- なぜかわからないけれど、自分を否定してしまう
- 原因のない身体の痛みがある
- なぜかわからないけれど、自分に自信が持てない
- なぜかわからないけれど、気になる人がいる(初めて会った気がしない)
- なぜかわからないけれど、恐怖を感じる
- なぜかわからないけれど、不安で仕方ない
- なぜかわからないけれど、熟睡できない
- なぜかわからないけれど、人との関係がうまく作れない
- いつも同じパターンになる
- 恋愛のパターンが同じ
- 家族を愛せない
- 夢を達成したい
- 仕事で達成したい目標がある
- 癖を直したい
- タバコ(お酒)をやめたい
- トラウマを抱えている
- 亡くなった人(意思の通じない人…植物状態、認知症、行方不明)に無念の思いがある
- 亡くなった人(意思の通じない人…植物状態、認知症、行方不明)と話しがしたい
催眠療法を受ける時に気をつけること
- 痛みや肉体的不快感がある時は避けましょう
- 酔った状態は絶対に好ましくありません
- 自分が信頼できるセラピストを選びましょう
- 怒り、いら立ち、憎しみなどの感情が抑えられない時は悪影響を与えます
- 前日は十分な睡眠をとりましょう
まとめ
催眠が怖いというのは、催眠に対する様々な誤解に起因するということがわかりました。
催眠療法は潜在意識にアクセスできる効果的なツールですので、上手に利用することで大きな効果が期待できます。
自分の人生を豊かに生きる上で、一つの選択肢として利用できる心理療法です。
催眠療法を受ける場合はセッションに影響が出ないよう、注意事項を守って受けてください。
最後までお読みくださいましてありがとうございます。